「国産ナチュラルチーズシンポジウム2020」2/27、蔵王酪農センターの主催で、日本獣医生命科学大学でありました。全国からチーズの作り手と提供する立場から女性4人の発表がありました。1神戸から「スイミー牛乳店」水門輝美さん神戸の宇治川という古い商店街のある町で、「商店街でチーズを作りたい」という思いから開業。ウォッシュタイプに特化。そうすぐに売れるとは思わなかった。でも自分が作りたいからこれを作る。イギリスで勉強、チーズ関係の仕事を長く務めてから2年前オープン。おしゃれな雑誌に載せてもらうよりも地元商店街の歳末謝恩セールのチラシで50円引きを広告することを誇りにし、チーズを日常の食に根付かせたいという哲学が徹底していた。じつは売り上げの8割はヨーグルト。それも見越して、店の名は「スイミー牛乳店」2群馬県川場村から「田園プラザ川場」片岡恵子さんフランスやヨーロッパでチーズ教室やサヴォアのヤギ農家で飼育からチーズ生産まで、豊富な経験を生かして、全国的にも有名な道の駅内の企業でのチーズづくり。人口3000人の川場村の道の駅GW連休には1トンのチーズを準備しても売り切れる人気。リピーター4割を誇る3栃木県那須町から「那須高原今牧場」高橋ゆかりさん酪農家の3代目。共働学舎で研修したあとさらに白糠町の酪恵舎で「忍耐」の修行時代を経て弟子の認定証をもらい、イタリアでも勉強。夫婦で工房開業。本人は牛チーズ、夫は山羊チーズと分担することで夫婦円満。ただし出産の前日まで仕込みをして望む徹底ぶり。夫のサポートではなく、自らチーズ職人として生き、子育てと両立させることを誇る。4兵庫県明石市から「国産チーズ酒場Ace」鈴木みどりさん酒店勤務を歴て、十勝の山羊チーズとの出会いに衝撃を受けて、国産チーズと日本酒を合わせる店に。国産のみで商う覚悟決める。全国の生産者からチーズを集める日本チーズのアンテナショップ的酒場。(千葉の「チーズ工房千」の柴田千代さんは体調により残念ながら欠席でした)スイミーさんのウォッシュ@ハイカラー」と、今牧場の「りんどう」田園プラザ川場チーズのストラッキーノと、チーズ工房千の産土。蔵王酪農センターのスモークゴーダほかいろいろパネラーのチーズ生産者のチーズをはじめ、全国300工房を超える日本チーズからよりすぐりが集まりましたCPAの皆さまによるすてきな盛り付け~司会はCPA坂上あきさんでした。4人のチーズ女子のお話はどれもおもしろかった。工房やお店を開くまで、学校を出たから、はい開業~、という人は1人もいなくて、修行や研修や別の仕事や、立場や人生経験やら、いろいろあってからのいまチーズとの関わり方で、4人の人生そのものであった。国産チーズ・日本チーズ、しかも職人の工房チーズというと、輸入品より、大手メーカーより、どうしても値段が高くなるわけで、「どう価値を高めるか」という議論になりがちだけれど、どうやら今回は、ブランド価値を高めるよりも、むしろ日常にどう日本チーズをなじませるか、という部分が際立った。特にたまたま同じ兵庫県のスイミーさんと酒場ACEさんの話。関西人の歯に衣着せぬ女子トークだからだろうか。もちろん、今牧場さんは名だたるチーズアワード、コンテストの受賞者であり、JALのファーストクラスにチーズが採用されたり、表彰という評価、ステータスでブランド価値を高めるのも間違いなくひとつの方法なわけだけれど、また、農林水産大臣賞を受賞された「チーズ工房千」さんが登壇していたらまた違った方向になったと思うが、とにかく今回はそういうわけで、今まであまり語られてこなかった日本チーズ振興論(振興作戦)と出会った気がしました。日本チーズを神棚にあげない。桐箱に入れない。高めない、低める。ブランド化しないブランド力。ブランド化・付加価値化よりも、日常化、習慣化、常習化とでもいおうか。地元のホンモノの手づくりチーズのおいしさを知ったら、もう離れられなくなる中毒性、リピート性NO CHEESE NO LIFE自ら地域になじんでいき、食卓に滑り込ませる力。どんな山でも頂上を高くするには裾野を広げよといわれる。そのためには、工房も増える、食べる人も増える、裾野という基盤、広さ=多さが求められる。あと、今回の登壇者には北海道が1人もいなかった。修行を北海道でした人はいたけれど。主催が蔵王酪農センターというのもあるにせよ、これもまた象徴的であった。チーズの原料である酪農の世界では、北海道に比べて都府県の酪農家が激減して衰退に歯止めがかからない。でもチーズ工房において、消費者の多い都府県は優位であり、実際に増えている。また、今回の作り手3人のうち、酪農家でチーズ加工をするいわゆる6次化は、今牧場さんだけで、あとの2人は、近隣の酪農家から生乳を調達していた。いわば地域連携である。酪農家が何もかも担う必要はない。連携するチーズ職人が表れれば、お互い専門分野を極めつつ手を取り合える。酪農家側からするならば、選ばれる生乳づくりをしているか、ということになる。今回は触れなかったけれど、先日の放牧酪農シンポジウム~土地を活かし、牛に動いてもらう牧場では、酪農家は放牧酪農に徹していれば、その生乳を使いたいという職人が現れて、おのずとイノベーションは始まる形が見えてきた。そうして、地域に根ざした生産者、チーズ職人が増えれば、今度はそれを売りたい「国産チーズ酒場Ace」さんのようなお店やレストランも現るだろう。それこそ一億総活躍、地域の力、土地の個性、テロワールである。小規模でも手を取りあえば強くなれる。小さく、かしこい、魚のはなし「スイミー」である。みんなそれぞれ自分の仕事をしながら、相手を称え、周囲に感謝し、自分もまた誇りを持って生きていける。あえて言うならば男社会は、競争社会である。勝つことが大事。だから高く売るか、安く大量に売ろうとする。女性は、共生なんですね。ほどほどにシェア。母が各家庭でおいしいご飯を作るように、それぞれの地域でおいしいチーズ工房ができれば、地域活性化にも、商店街の活性化にもなる。チーズを作る女性たちとの対話から、そんなことを考えました。蔵王酪農センターの冨士理事長~、菅井常務、宮沢さん、佐藤さん、ありがとうございました。それと何より、コロナウイルスでどのイベントも中止や延期になる中、よくぞ開催して頂きました。会場での懇親会は中止になりましたが、受付時にアルコール消毒など衛生対策を万全に準備されていました。もともと畜産・酪農や加工の現場では動物検疫の観点から、玄関や建物ごとに手や靴底の消毒、マスク着用といった防疫・ウィルス対策が徹底されています。もしかしたらこういう時強いのかもしれないなと思いました。ベジアナ@日本チーズアナ・あゆみ
This article is a sponsored article by ''.