8月某日、長野県上田市まで遠征して、チーズ工房見学に行ってきました。今回機会をいただいたのは食べあるキング食材探求プロジェクト。過去にも様々な食材を知り、学ぶ機会をもらってます。特にこの工房にご縁をいただいたのがチーズプロフェッショナル協会。国内外の数々の受賞歴があるアトリエ・ド・フロマージュ工房見学をできるチャンスをいただきました。きれいな場所だなー。この日は台風の影響で少し雲が多い天気でしたが、軽井沢や小諸へ行った際の立ち寄りスポットとしてもとても良い。ここ最近の日本のチーズ消費量はぐんとアップしていて、ここ数年は連続で過去最高(農水省調べ)を記録し続けています。チーズの専門店が出来たりチーズを売りにした商品が次々と話題になっている事からも、チーズブーム的な動きは皆さんの肌感覚としてもあるのではないでしょうか。中でも徐々に増えているのが国産チーズ工房。アトリエ・ド・フロマージュは約30年ほど前、長野県東御市にアトリエを構えました。質の良い牛乳を手に入れられ、そして風土を生かしたチーズ作りに適していると考えてこの地を選んだのだそう。今回工房をくまなく案内してくださった塩川和史(しおがわ かずし)さんは「長野県は日本の中で高品質なチーズが作れる場所の一つ」と言い切ります。実際に長野県は作り手も増えてきており、チーズ生産者も増えてきているということ。乳用牛の約6割を占める北海道には数字では適わないけれど、風土をしっかり捉えた作り手の技によって、個性的な味わいを感じられる製品が地方ごとにあるということです。アトリエ・ド・フロマージュ本店には、レストラン、カフェ、ショップがありますが、実は奥にチーズ工房もあるのです。工房は非公開なのですが今回は中に入らせていただけることになりました。アトリエ・ド・フロマージュは15種類のチーズを扱っています。そのひとつが皆さんにもおなじみのカマンベール!あのクリーミーな味わいにファンも多いチーズですね。工房の中で静かにその時を待っているかのような、カマンベールの大元。丸い型で作るので、あの形になるわけです。お餅みたいだった。そしてあの縦じまは網の模様だったのか...!白カビ菌を吹き付けて5日目くらいにはうっすらとふわふわな菌が育ちます。愛おしいくらいのもふもふ!しかしこれは単に白カビを吹き付けそれらが育った状態。まだ中も固く、われわれの知るカマンベールのとろーんとした状態になるまでにはさらに数日、そしてその後冷蔵庫に寝かせて1か月の熟成(追熟)を行います。そもそもチーズってどうしてあんなに濃厚で旨みがあるのでしょうか。それは通常、作成過程で牛乳のたんぱく質が分解されるからです。その際にアミノ酸や脂肪酸をつくり出すことで、いろんなチーズが出来上がります。これら分解に必要なのがカビや酵素、微生物です。ここまで書くとなんとなく、日本酒や醤油味噌などを思い浮かべる方もいるかもしれません。まさにチーズ作りは自然との戦い。その地域にある菌や微生物と仲良く付き合っていくことで生まれる産物です。「チーズ造りにはやっぱり納豆はダメなんですか?」って聞いてみたら、やっぱり駄目なんだそうです。納豆菌強し。日本酒造りの杜氏も納豆は食べないと聞きますが、そのへんも同じなんですね。アトリエ・ド・フロマージュの工房は大きな入り口から入った作業場の中がさらに仕切られていて、その中にウォッシュの部屋、ハードの部屋、ブルーの部屋などと分かれていました。ドアには一人ずつ従業員の名前が書いてあり、それぞれの担当があるようです。後で聞くとなんとここの作業、ほぼ4人でまわしていると!最近お一方入ってきて5人になったけどー、って、すごいハードじゃないですか!年間390トンの牛乳から41トンのチーズを作っているのだそう。菌を相手にするお仕事って小さな子供を育てているようなもので、いつでも頭の中はチーズのことでいっぱいって感じ。この棚ひとつで700キロの牛乳分。牛乳からするとチーズってほんのわずかしか作れないんだなー。塩川さんはブルーチーズの達人。早速作っているものを見せていただきました。表面からみるとこんな感じですが、ちゃんと中まで菌が入っているかどうか...、カット!(これ緊張する瞬間...)パカッと割ってシビアにカビの入り方をチェックする塩川さん。これは3か月の熟成期間。チーズってじっくりじっくり育ちますね。ところで、工房では毎朝搾乳をしてそこからチーズ作りを行うのですが、本当に人の手で作られているなぁと感じる場面をたくさん見ることが出来ました。私たちが到着した時間帯にはちょうど牧場へ行かれているということでした。ほどなくして戻っていらっしゃり、牛乳から作っていく工程の一部を見せていただきます。これらをぐるぐる~っと温めていきます。殺菌です。牛乳のお風呂みたい。この作業を終えたらところで乳酸菌を入れ、さらに「レンネット」を入れて乳を凝固させます。レンネットとは、子牛の4番目の胃袋から発見された酵素です。子牛はお母さんのお乳を飲むとそのまま栄養を吸収できずスルーしてしまいます。そのため4番目の胃袋の中で飲んだ乳を凝固させて、ゆっくりと消化することで栄養を吸収していくのです。その酵素がレンネットです。現在は、化学的に作られたものを使用しているそうです。プルンプルン。これをカットしていきます。カードカッターで細かく切っていくとまるで絹ごし豆腐みたいになります。これちょっと気持ちよさそうだったな。しかしこの作業、見ている以上にむずかしそうです。ホエーがたっぷり出てきて、これがまた絹ごし豆腐感を出してました。そんな表現しかできませんが...、これがなんと、食べてみてもやっぱりどこか食感は絹ごし豆腐でした。想像しているよりも柔らかな味わい、あっさり。ほのかに後引くミルク味。とっても貴重な体験させていただきました。かなり時間的な端折りはあるものの、この角切りにした乳(カード)からしっかり水分(ホエー)を抜いていくとチーズの素が出来上がるというわけです。ここから前に写真であったように型に入れていく...、というような作業になるそう。このカットの際もとても慎重に様子を見ながら手を加える塩川さん。ちなみにホエーもドリンクとして飲みました。大量のホエーが出るんですよね。こちらは購入できます。ライム味の乳酸菌風ジュースでした。アトリエ・ド・フロマージュは2016年のジャパンチーズアワードで、ココンとブルーチーズで見事受賞しています。ブルーチーズは国際コンクール『モンディアル・デュ・フロマージュ』で最高賞であるスーパーゴールドを受賞。ココンも金賞を受賞。企業としてチーズにかけた熱い想いを感じます。塩川さんはもともと料理人としてアトリエ・ド・フロマージュのレストランで勤務、チーズ職人になってからは11年、トータルで20年勤務していらっしゃいます。塩川さんは、「料理人としてチーズに親しんでいたことからわかることもある。」と話します。どんなブルーチーズが好まれるか、どんなニーズがあるのか料理人としての経験から感覚をつかみ、また調理する際、チーズの融点が日によって、牛の状態によっても全く違うことを知ったということです。2012年にブルーチーズを引き継ぎ、『自分のチーズ』を作るため様々なことを試していきました。2013年春にはある程度自分の理想とするブルーチーズを完成させたといいます。塩川さんの考えるブルーチーズは<クリーミー>。青かびは脂肪分を分解することで繁殖し旨みを蓄えます。ともすると矛盾するのですが、「いかにクリームを逃さないようにするか」に挑戦し、口に入れた時の口どけ感にこだわった商品を届けたいと考えています。塩川さんだけのコツやオリジナル工程、さらには鋭い感覚。職人の経験と技により、塩川ブルーが生まれるのですね。この後試食&ランチ&カフェ。次の記事に続きます~こんなのもあります。---アトリエ・ド・フロマージュ本店食べあるキングNPO法人 チーズプロフェッショナル協会
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