よ〜〜く魚卵くださいよ〜〜〜↑魚卵は魚卵でも〜〜〜フグの卵巣。石川県白山市の誇る海の珍味です。ふぐの子(卵巣)のかす漬けとぬか漬けですか。てか、あの〜フグの内臓って食べていいんですか?はい。ここは石川県白山市にある「あら与」さん。石川県は日本で唯一、ふぐの卵巣のぬか漬けと粕漬けの製造・販売が許されているのです。それにしてもフグといえば、下関とか北九州のイメージです。ふぐのとれない白山市(旧・美川町)でどうしてふぐの卵巣のぬか漬が特産になったのでしょう?あら与さ〜〜ん!教えてくださ〜い!7代目の荒木敏明さんに尋ねました。もともと、石川県白山市(旧・美川町)は、昔から北前船の寄港地として栄えてきました。北前船とは?江戸時代から明治にかけて大阪と北海道を結んだ貿易船で、春に大阪を出発して、瀬戸内海から関門海峡を抜け、対馬海流にのって日本海を北上し、山陰、北陸へ立ち寄りながら北海道までを往復した、輸送と商社の機能を兼ね備えた船のことです。(北前船を十数隻持つ船主もいて、江戸時代に多くの財閥が誕生しまれました。)北海道でニシン漁が盛んだった頃は大量のニシンを関西へ運んでいました。しかも食用というよりは「鰊粕」という肥料だったそうです。(ニシンの油の搾りかすおかげで関西の農業は土づくりができ、みかん、綿花、藍、菜種などの栽培が栄えたそう。)その北前船が大阪へ帰る途中、佐渡沖でとれたふぐが中間地点の金沢港や美川の港にあがりました。当時からふぐの身はおいしいと重宝されたそうですが、その”副産物”である”卵巣”をどうにか食用にして活かすことはできないかと考え、発達した知恵と技の結集が、「ふぐの卵巣のかす漬け・ぬか漬け」になったそうです。(ふぅ〜〜。←やっとたどり着いた〜)(なので、加工の販売許可は石川県だけですが、佐渡の一部の郷土料理にもふぐの卵巣はあるそうです)。さあやっと行程です。簡単にいうと、塩水漬け1年、ぬか漬け2年ですが、小さな卵巣を食べるために3年かかるってすごいスローフード〜〜。まず塩漬け1年〜。(写真はちょうどサバの塩漬けの時だったので、ふぐではなくサバです)1年間、塩水(水は白山の伏流水)に漬けこんだ卵巣がこちら!2回りほど大きいたらこみたいですね〜。猛毒が徐々に抜けて最初より引き締まってくるそうですが、本番はここからです!このふぐの卵巣を〜〜〜このように酒粕に付けこむと「粕漬け」です。ぬかに漬け込むと「ぬか漬け」になります。(粕漬けとぬか漬け、2種類あるんですね。)事前に申し込めば体験をさせていただけるそうで、わたしたち食べあるキング白山市の食材探求プロジェクトチームも体験しました〜。酒粕→塩漬け卵巣→酒粕→塩漬け卵巣→酒粕→塩漬け卵巣と交互につけこみます。これをなんと1〜2年間寝かせると、ふぐの卵巣の毒が抜けるそうですが、なななんと、どのようなメカニズムで塩と糠によってフグ毒が抜けるかは、いまだに謎だそうです。ところでふぐの毒ってなに???テトロドトキシンという成分だそうで、フグの体内でできるわけではなく、海の細菌によって作られ、食物連鎖を経てフグの中の主に卵巣や肝臓に蓄えられるそうです。わーーーお、一番毒の貯まった部分が卵巣なんですね〜。よりによってリスク集中MAX部分を食べるって、食へのあくなき探究心というか、勇気ある冒険心と言うか、先人の生きる知恵と言えばそれに尽きるのですが、しかしなんでまた〜う〜ん白山市美川地域のみなさまに敬服です〜〜〜。とにかくまあ、こうして合計2〜3年間の漬け込まれて過ごすという漬け込み部屋へお邪魔しました。発酵部屋ですね。茶色い杉樽が独特の赤みを帯びた色合いになります。なんの色に見えますか?今年はトリ年、トリといえば〜〜〜???フラミンゴ色〜!実は、「あら与」さんは、発酵学者で東京農業大学名誉教授・農学博士の小泉武夫先生が名誉会長を務める「食に命を懸ける会」会員に認定されているのですが、その小泉武夫先生が、この樽の色の変化を見て「フラミンゴ色」だとおっしゃったそうなのです。(しかし「食に命を懸ける会」←フグだけに本気の名前ですね。)荒木敏明さんは7代目ですから、何百年も続くこの室に住む菌と、杉樽の成分とふぐの卵巣と粕漬けといろんな微生物が関係し合ってこの独特の色を生み出し、毒を消す作用と同時に、風味とうまみをつくりだすのです〜。この杉樽をつくる職人さんが今はもうおらず30〜40年前のものを大切に使っているそうです。白山市の麓は林業も盛んですからこの水産加工には地域の林業と木工職人さんがつながりあって来たのですね〜。(その後の杉樽が心配ですが、まあ話を先に進めましょう)ところでこの立派な重しの石は、手取川のものだそう。(今は河川敷の決まりもいろいろあるでしょうが、大昔ですからね〜。)白山市の旧・美川町はまさに白山麓から流れる手取川の河口域に位置します。美川という地名が「美しい川」を物語っています。そして「石川県」の名前こそ、「手取川には上流から流れてきた石がごろごろ多いなあ、まるで石の川だ、そうだ石川県だー」という由来があるそうです。改めて見渡すと石だらけ。石川県最大の河川、手取川!白山市に発酵文化が発達した理由は気候、地形、環境、様々ですが、手取川の石も、地域の宝のひとつなんですね〜〜。う〜ん。命をかけた「ふぐのぬか漬け食文化」すごい。わたしはすっかり感動して「あら与」7代目、荒木敏明さんと記念写真撮らせていただきました。あら!杉樽の石の奥の方に、怪しいおいしい精霊はっしーがいますね。探してみてね。そんなこんなのときを経て、食品衛生法で人体無害とされる1gあたり10MU以下の毒性になるそうです。なに?MU?また聞いたことない言葉がでてきましたよ。(もう〜このブログ原稿、まじで1週間前から書いているのにおもしろい情報が次から次とあって、知った以上は御伝えしたいですし、書き終わらないんですよ〜)先ほどの工程表の一番下の青文字を、ぎょらんください〜。MUとは、マウスユニットの略!フグなどの毒の影響量を示す単位で、実験マウスに毒性物質を投与し30分で死亡させる毒の量が1MU/1gなのだそう。人間の致死量は10000MUなので、1000MU/1gのフグ毒を10g摂取したら死に至ります。食品衛生法では、10MU/1gであれば人体に無害とされますが、あら与さんではさらに厳しく出荷前の検査で基準値をその半分の5MU/1g未満にしているそうです。また、「ふぐの子糠漬・粕漬」製造は、あら与さんなど「石川県フグ取扱い条例」の免許取得業者のみに製造が許されています。http://www.arayo.co.jp/user_data/safe.phpそれにしても完成まで3年。こ〜〜〜んなにたいへんな手間のかかる製造工程。誰がどうやってこの製法を編み出し、連綿と受け継がれることになったのでしょう。不思議でおあり、歴史ロマンでもあり、おもしろいですね〜。さあ。製法と歴史を学んでからいただきまーす!真っ白いごはんの上に載せたふぐ子のお茶漬けです。しょっぱさの中に旨みが凝縮され、ほんの少し載せただけでもぷちぷちの食感がはじけてごはんがすすみます〜〜〜。しかもなんて良心的なお値段〜。加工場とは別の店舗で販売とイートインコーナーがあります。美川の人々のふぐ愛、知恵と技の結晶ともいえる、じ〜んと感動を覚える味です。下関で有名なふぐですが、そもそも天然ふぐの漁獲量トップは石川県なんだそうです!この意外性にもびっくり。ところで、人間国宝で、食通でも知られた八代目坂東三津五郎さんは、昭和50年1月16日、京都でふぐの肝を食べて急死したそうです。(食べたのは1/15)この事件は、危険を承知で毒性の肝を4人前もたいらげた三津五郎がいけなかったのか、フグ調理師免許は持っていたが板前の包丁捌きがいけなかったのかで、大論争を引き起こし、法廷では、「もう一皿、もう一皿」とせがむ三津五郎に板前が渋々料理を出したことが争点となったそうです。人間国宝にもなった有名な歌舞伎役者でしたから「ふぐ」と言えば「三津五郎」というぐらい世間に知れ渡ったニュースだったそうです。塩漬けやぬか漬けで2年も3年もかけて毒を抜く、こうした方法が石川県で厳格に受け継がれている真意がわかりましたね。先人の編み出した知恵と技術に、敬意を払うことを忘れてはなりません。ふぐにまつわる俳句を芭蕉さんが詠んでいます。あら何ともなやきのふは過ぎてふくの汁河豚汁や鯛もあるのに無分別他に、ふぐについて有名な話としては豊臣秀吉の朝鮮出兵で、佐賀県に集結した兵士達がふぐを食べ多くの犠牲者を出したそうです。以後、わが国初のふぐ禁食令が秀吉により出されたのだとか。その後、伊藤博文さんが山口県で食べたふぐがあまりにおいしかったことから、山口県に限ってふぐ食を解禁したなど、いろんな人間模様があります。おいしいものとリスク。食べるとは?いろいろ考えさせられることの多いふぐの卵巣のぬか漬け体験でした。いや珍味ってちょっぴりありがたく頂くからおいしいんですよね。それにしてもこの製法を編み出した人達に改めて拍手を贈りたい気持ちになりました。「あら与」さんありがとうございました。ベジアナ@ふぐたべたいな〜 あゆみ
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