昨年の11月、パリで大人気のユーゴ・デノワイエが恵比寿にオープンし、予約が取れない日が続いた。ユーゴ・デノワイエといば、NYタイムスが「世界一のお肉屋さん」と称したパリ屈指の肉職人。数々のトップシェフを顧客に持ち、ミシュラン星つきのレストランのほとんどからオーダーを受けているという、とんでもないお肉屋さん。ただ肉を裂き、熟成させるのではない。牛の餌にまでこだわっている。そんな肉を食べてみたい。ネット予約ページを見てみても、ずいぶん先まで満席。だが、ある日の日曜の午後、電話してみたら、たまたま当日の席が取れた。(日曜は意外と狙い目かも)駒沢通り沿い。山本酒店や、焼肉キンタンの反対側あたりか。さすが肉屋さん。1階のカウンターには寿司屋のネタケースのような冷蔵庫があり、値段が出て肉の販売をしている。カジュアルな感じで食事も可能。2階のビストロへ。牛の毛皮のクッションが置かれくつろげる雰囲気。テーブルのナイフ置きは牛の角だったり......日本のビストロや焼肉店にはない、小洒落たセンス。肉をオーダーするときも、やっぱり肉屋さんぽい。「今日は、リムーザン牛のいいサイズのバヴェットが入ってます」リムーザン牛?バヴェット?さすが世界一のお肉屋さん、出て来るワードがよく分からない。耳で聞いたら「リムー産」の牛かと思ったからね(笑)(どこだよ、リムーって)リムーザン牛というのはフランスの銘柄牛。ユーゴ氏が実際にリムーザン地方を訪れ、その環境とお肉の状態に心奪われた牛らしい。すごそう。そしてバヴェット。これは、ハラミのこと。「ヨダレかけ」の意味で、三日月の形をしている。厳密には、ハラミとは同じじゃなく、カイノミ(貝の身)らしいのだが。バインダーに挟まれた、業務用的な本日のお肉リストを、店員が持ってテーブルに来る。「213gもありますし、262gというのもあります」と、細かい数字。つまりは、既に切り分けられてるこの塊単位で選ぶのが良いらしい。なんとも肉屋さんぽい。いい感じのサイズのメインと、そこからの逆算で、タルタルや、梅山豚の燻製サラダ、付け合わせのポテトやクレソンなどをオーダーし、あの肉の登場を待つ。来た。例のやつが。火の入れ具合は当然素晴らしいが、炭の香りのつけ方が、ちょうどいい。つけすぎると、炭味になってしまう。弱いと意味がない。そして赤身肉は、噛んだときに、どうかだ。噛みごたえ、つまりほどよい硬さ&弾力と、噛んだときの溢れ出るジューシー感。かといって、それが、脂っぽい肉汁でなく、牧草の大自然で育った感を感じさせる、野性味。ちょっとした草の青臭さ、土の泥臭さを感じ、このリムーザン牛のバヴェット、実に美味い。あ、つい言い過ぎてしまった。味を表現するのって、難しい。自分の味覚が、果たして、牧草を感じてるのかというと、そんなはずない。ただ、ユーゴデノワイエという人物について、何かで読み、そのこだわりを脳裏に浮かべながら食べたとき、なんだか牧草と土の香りが、するような気がする。美味いに決まってる。と考えると、我々の味覚などいい加減なもので(笑)食べ物というのは、つくづくその物語性だなと思う。そういった意味で、このストーリーたっぷりな世界一のお肉屋さんは、美味しく感じさせてくれる店だ。デートや接待、ファミリーにオススメ。
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